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2006/07/27

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(55/100 '06)

「ヴィゴなのに見損ねた」
そう思って見に行っただけなのに、やられた。

ネタバレになっちゃいそうなので、未見の方はご注意ください。



副題に、「暴力と愛の対立」とあるのだけど、
まさに、この作品の本質はそこにあります。

小さな街の平凡な男がある日、店に来た無法者を正当防衛で殺害。
一躍、全米中のヒーローになってしまう。
と、テレビ放送を見た別の男たちが、その男、トムを訪ねてくる。
彼らはトムを、「ジョーイ」と呼ぶが、トムは人違いと一蹴。
けれど男たちは諦めず、トムの周りをつきまとい始める。
弁護士の妻エディは身の危険を感じるとともに、
トムに対する疑念をふつふつと心につのらせてゆく。

種明かしをすれば、トムはジョーイなのです。
マフィアの生活に嫌気がさしたのかどうか、ともかく、
すべてを捨ててトムと名乗り、エディと出会い、結婚する。
絵に描いたようなしあわせな家族。
穏やかで優しく、妻の仕事に理解があり、みなから好かれるトム。

彼が捨ててきたジョーイという過去は、暴力と恥辱にまみれた世界。
自分の中のジョーイは死んだと思っていたトムですが、
切羽詰まった状況で、ジョーイは死んでなどいないことを思い知る。
当然のように、エディは彼に騙されたと思う。
すでに物事の判断のできる息子も、父を怪物のように思う。

妻も息子も、トムの真実と、彼への愛との間で葛藤する。
人はこういうとき、自分の知っているその人だけを信じることが、できない。
出会ってから今日までのトムだけを信じればいいのに、
これまで共有してきた時間の中にいるトムだけを信じればいいのに、
それができない。悩み、苦しみ、泣き、叫び、引き裂かれる。

けれどただひとり、幼いサラだけが、それができる。
彼女の中にあるのは、父への愛だけ。
彼女が受けた愛を、彼に返すだけ。
人のことばは聞かない。信じない。
ただ、自分の見た父を、自分の知っている父を、それだけを信じている。

エンディングの解釈はさまざまあると思います。
受け入れてはみたものの、家族という小世界に秘密を取り込んでしまい、
大きな罪を覆い隠して、繕いきれないぎこちなさを抱えながら、
それでも家族という集団を形成したまた体裁を整えるのだ、などと。

けれど、テーブルに注いだままの視線をトムに移したとき、
エディの瞳は涙でぬれていたけれど、わたしはそこに、未来を見たい。
葛藤があったにせよ、サラと同じ思いでトムを受け止めたんだ、と。

結局、何よりも強いのは愛なんだ、と。
暴力の歴史を覆すことができるのは、愛だけなんだ、と。

 

DVD ヒストリー・オブ・バイオレンス

販売元:日活
発売日:2006/09/08
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