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2006/08/19

『もし、あなたなら 2 〜 五つの視線』(66/100 '06)

同じくシネマコリア2006で、『もし、あなたなら2〜五つの視線』を見る。
これは『もし、あなたなら〜六つの視線』と同じく、
韓国の人権委員会が著名な監督に短編の制作を依頼したオムニバス。

前回の『もし、あなたなら〜六つの視線』よりも、テーマはより社会的に、
けれど内容はよりエンターテインメント性が高くなった気がします。
前回は、子どもの人権や、顔で人を判断したり、といったものもありましたが、
今回は非正規雇用者の待遇や、脱北者や中国の朝鮮族への差別など、
扱う問題がより社会一般の問題へとシフトしてるかんじです。

もっとも期待していたのは、リュスンワン監督の2作品め、
そしてチャンジン監督の4作品めだったのですが、
見終わってみれば、5作品、どれもに、「気づき」がありました。


リュスンワン監督は言わずと知れた『クライング・フィスト』ですが、
それをパロったセリフも登場させ、男らしさと女らしさという、
ステレオタイプなものの見方に縛られる男の悲哀を描いた作品でした。
なんというのかな、ただ悲しさを描いたというのではなく、
愛すべきおバカさん、みたいな。そんなかんじで。

チャンジン監督の作品は、80年代の民主化運動花盛りの時代を借りて、
反政府運動で捕えられたソウル大の学生と、彼を取り調べ、
必要に応じて拷問を加える取調官との、地下室でのやり取りです。

ソウル大生を『拍手する時に去れ』でスタンドの店員を演じていたイジヨンが、
取調官を、同じく『拍手する時に去れ』で、チャスンウォン演じるヨンギの
ライバル検事を演じていたリュスンヨンが演じていました。
ふたりとも、がらっとイメージが変わっていて、さすが役者、ですね。

取調官は、いわば陰の仕事なので、非正規雇用者なのですが、
それをいいことに長時間労働を強いられ、ボーナスは仕事の能率に応じて、
医療保険はなし、いつクビになるかわからない、という待遇を受けています。

結局自分のやっていることに虚しさを感じた取調官は、
ソウル大生に拷問のうまい切り抜け方を教えてやり、
交代までの4時間、どうせ口を割りそうにないからといって、
五目並べを始めちゃうわけですね。

そして、交代要因としてやってきた次の取調官。
もちろん彼も非正規雇用者ですが、その彼に向かって学生が言うわけです。
「大変でしょ。でも、もう少し我慢してくださね。
 もっといい時代がやってきますから。。。」

あたしは、この最後の場面、ソウル大生のアップでこのセリフを聞いて、
なんだか異様な雰囲気を感じたりもしたんですが、それだけでした。

ところが、映画後にあったイジンスクプロデューサーとソチョンさんとのトークの中で、ソチョンさんがおっしゃったのですね。

今のノムヒョン政権の半分は、この時代に学生運動をしてた世代で、
その彼らが、当時抱いていた理想を形にしようと努力したのが今の韓国。
最後にソウル大生が「いい世の中になるから」と言うのは、
彼らが将来、国を作っていくのだ、という予告にも似た宣言に聞こえる。

でも、現実には今、非正規雇用の問題が韓国内ですごく大きくなっている。
それをチャンジン流に皮肉っているのが、最後のセリフなんじゃないか、と。
そしてそういう皮肉を込めた映画を、人権委員会から委託されて、
国の費用で撮ってしまったチャンジン監督。。。

いやもう、チャンジン監督の底知れぬ度胸とセンスに感服しましたが、
それを見抜いていらっしゃるソチョンさんにも、
思わず尊敬の眼差しを注いでしまいました。

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コメント

こんばんは、初めまして。
チャン・ジン監督の『ありがたい人』について・・・私は作品の時代や背景がつかめなかったので、今ひとつ面白さが理解できませんでした(場内からは笑い声が何度も起こっていましたが)。社会問題とともに監督さんの皮肉も込められていたのですか・・・ひとつ勉強になりました。最後に上映されたキム・ドンウォン監督作品は丁寧なドキュメンタリーだったので分かりやすかったです。
『トンマッコルへようこそ』を既にご覧になったのですね。南北対立を描いた韓国映画は多いようですが、チャン・ジン監督がどのような描き方をしているのか興味深いところです。

投稿: 朱雀門 | 2006/08/19 23:05

朱雀門さん、ようこそおいでくださいました。
朱雀門さんも、ご覧になったんですね。
私はたまたま『〜六つの視線』も見ているのですが、
わかりやすさで言えば、『六つ』のほうが上かもしれません。
ただ、そのぶん居心地が悪くなるかもしれません。
人権に対しての自分の無知さ加減を突きつけられた気分で。

『五つ』のほうは、エンタメ性が高くなったぶんだけ、
居心地の悪さは消えましたが、朱雀門さんのご指摘のように、
わかりにくさは上がってしまったかもしれません。

私はほとんど無条件にチャンジン監督がすきなので、
あの舞台のような限られた空間がすでにツボで、
あとはもうにやにやしっぱなしでした。

『トンマッコルへようこそ』は、おもしろかったですよ。
ああいう主張の仕方もあるんだなって、
私はそう思いました。
うーーん、でも、チャンジンずきの私の色眼鏡も入っているかも。。。

投稿: 音樹 | 2006/08/19 23:57

追記です。

朱雀門さん、
こちらからも TB とコメントをと思ったのですが、
どちらもうまく作動してくれません。
ごめんなさい。時間をおいて、またトライしてみます。

投稿: 音樹 | 2006/08/20 00:16

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