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2007/04/01

『絶対の愛』(4/100 '07)

長かったこの数か月のプロジェクトも収束に向かい、
もうあと1%くらいを残すのみとなりました。
毎年年末から春先は忙しいのだけど、今回は格別だったなぁ。。。
最後に休んだのが2月10日で、それから無休で働いていたけれど、
この週末、やっと暦通りに家にいることができました。

とりあえず手をつけたのが、リアルのだめと化した部屋の掃除。
ところがこれが一筋縄ではいかず、半分で挫折です。
それからたまってた録画を整理して、ちょっと見たりもして、
天気もいいから千鳥が淵まで桜を見に出かけ、
懸案の冷蔵庫を物色しに電気街に寄ったりなんかして。

ああ、ふつうの生活って、なんてすてきなのかしらん。

と言いつつも、多忙中も「どうしてもっ!」という映画だけは見てました。
といっても2本だけ。しかし、見ても書くヒマがなく、今日まで放置。

2本のうちの1本は、どうやってもはずせないキムキドク作品。
前2作では、主人公がほとんど話さず難解さを増していましたが、
本作品は多弁なほどに話すのに、難解さは変わらず、でした。
少々ネタバレになりますが、、、

ジウとつきあって2年になるセヒは、彼を失うことを死ぬほど恐れている。
ジウがほかの女と話すことが許せず、精神的にどんどん不安定になるセヒ。
セヒの求めているのは、決して色あせることのない「絶対の愛」。
けれど、この世の中に「絶対」などというものは存在しない。
だから、セヒは苦しむ。

苦しんで苦しんで、セヒの出した結論は、生まれ変わること。
時間がすぎることで愛が色あせてゆくのなら、時間を巻き戻せばいい。
そう考えたセヒは、別人になって、ジウとの愛をやり直そうと決めます。
セヒの選んだ「別人になる方法」とは、成形でした。

セヒが何も言わずに自分の前から姿を消して半年。
ジウはある日、スェヒという女性に出会い、恋に落ちます。
スェヒが、顔を変えたセヒだとは気づかずに。

新しい恋を始めても、ジウの心にはセヒが住み続けています。
スェヒはやがて、ジウの心の中のセヒに嫉妬を抱くようになり、とうとう、
彼の気持ちを確かめようとセヒの名で「あいたい」と手紙を送ります。
ところがジウは、自分ではなくセヒを選ぶのです。

待ち合わせの場所で、セヒだと言うスェヒを見て愕然とするジウ。
彼女の取った行動が理解できず、許せず、葛藤を抱えたジウの決断は、
自分も顔を変えることでした。

半年。
スェヒはジウを待ち続け、ようやく半年が経ちました。
自分に目をくれる男がジウではないかと、ひとりひとり確かめてゆくスェヒ。
顔が違っていても、手を握ればわかる。そう思っていたスェヒですが、
ジウを見つけ出すことは容易ではありませんでした。

どの男もジウではない。
焦り出したスェヒはある日、自分の前からこれ見よがしに走り去る男を見て、
彼こそがジウに違いないと確信してそのあとを追いますが、、、

日本タイトルは『絶対の愛』ですが、原題は『時間』です。
冒頭の「カッ カッ カッ」という音は、秒針が時を刻む音。
時間は、だれにでも平等に訪れ、だれにでも平等に、その経過を刻みます。

マグリットの絵に、顔をスカーフで隠した人物がよく登場します。
入水自殺したマグリットの母親が発見されたとき、
衣類が顔に巻き付いていたことが強いイメージとして残り、
そのイメージをモチーフにして描いたのだと言われていますが、
本作ではセヒも、スェヒも、顔をシーツで覆い隠しシーンが出てきます。
マグリットの作品でのこの人物は「死」をイメージさせるモチーフですが、
本作での「シーツで顔を隠す行為」というのはむしろ、
個人のアイデンティティの消失の象徴であり、顔を変えるということは、
つまりアイデンティティの挿げ替えなのだと思います。
もちろん、顔がアイデンティティのすべてではありませんが、
かなり強烈な一部であることに間違いはありません。

セヒは絶対の愛を得るために、アイデンティティを放棄するのですが、
それは、時間の経過が絶対の愛を不可能にすることを嘆いてのことでした。
顔を変えて、新しい自分になれば、時間を巻き戻すことができる、と。
顔など、たいしたことではないのだと、セヒは思ったのかもしれません。
自分の心がこのままであれば、また愛してもらえるはずだ、と。

けれど、あんなに愛していたはずのジウを、セヒは見つけられません。
手を握っても、ベッドを共にしても、ジウではないことがわからないのです。
ジウでなければダメだと思っていたはずなのに、
彼がいなければ生きていけないと思っていたはずなのに、
顔が変わってしまっただけで、そのジウがわからない。探し出すことができない。

映画の最後、正確に刻まれていた時は、
いつしか別の音に変わっています。
「トックン トックン トックン」と。


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