« 『リトル・チルドレン』(81/100 '07) | トップページ | 『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』(84/100 '07) »

2007/12/01

『パンズ・ラビリンス』(83/100 '97)

毒のあるファンタジーというのはかなり好きで、
だからこの作品も見なくちゃという気持ちもあり、
さらにギレルモ・デル・トロへの期待もありつつ。

いやぁーーー、第一声は何かと言ったら、「いたいっ!」
でした。痛いの苦手なんだよなぁ。あと大量の虫。
目を背けたくなる映像も多かったけれど、背けず見たよ。

で、結論から言えば、これはファンタジーではないのであった。
ファンタジーという仮面をかぶった、現実の物語。
ネタバレしますよ。

登場する女性の名前が象徴的。これはチェックしないと。
おかっぱの少女は、オフィーリア。彼女の母親は、カルメン。
そして屋敷の手伝いの女性はメルセデス。
この3つの名前、どんな印象を受けますか。
あたしはこうでした。

オフィーリア:『ハムレット』の恋人。不幸の連続で発狂して自殺。
カルメン:歌劇『カルメン』の主人公。恋に生きる女。
メルセデス:ベンツ! その元はスペインの女性名。意味は「神の恵み、慈悲」

最初に書いたように、これはファンタジーではない。
スペイン内戦のさなか、母の再婚相手の本質を見抜いてしまい、
つらい現実から逃れるようにオフィーリアが空想した世界、
それが、パンが門番を務める王国。自分のもといた場所。
オフィーリアにとっては、それが現実をなんとか生きる唯一の方法。

けれど彼女が夢想した世界の門番は、
現実の世界の義父とちっとも変わらない暴君で、
女王である彼女を怒鳴り、最後通牒を突きつけるほどの上から目線。

彼女を、本来的には守らなければならないはずの母親は、
内戦で夫を失い、生きるために男の庇護の元に入ることを選んだ女。
新しい夫の機嫌をそこねず、息子を無事に生むことだけが、彼女の願い。
娘が何を言っても、本当には彼女の苦しみを理解しようとしない。

その彼女を救ったのは、メルセデスの存在。
現実に向き合い、戦う女。自分は卑怯者だと、自覚している女。
それを認めるだけの強さを持ち合わせている女。
けれどその彼女ですら、オフィーリアの運命を変えることはできない。

ハッピーエンドにはならない。
戦争や内戦なんて、そんなものだ。悲劇の宝庫。
それをわかっているからこその、監督のブラックジョークなのだと思う、
最後の、They lived happily ever after. は。

|

« 『リトル・チルドレン』(81/100 '07) | トップページ | 『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』(84/100 '07) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/56534/9207625

この記事へのトラックバック一覧です: 『パンズ・ラビリンス』(83/100 '97):

» 「パンズ・ラビリンス」(メキシコ/スペイン/アメリカ 2006年) [三毛猫《sannkeneko》の飼い主の日常]
少女は理想郷の存在を信じた。 目を背けたくなる現実からここではない何処かへ「パンズ・ラビリンス」。 [続きを読む]

受信: 2007/12/05 16:43

« 『リトル・チルドレン』(81/100 '07) | トップページ | 『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』(84/100 '07) »